『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』は、ベルギーの監督シャンタル・アケルマンが、20代半ばで撮影した作品です。1975年の製作以来、<シャンタル・アケルマン映画祭>(2022年開催)で劇場公開されるまで日本での公開がなされなかったなど、世界的にも決して知名度が高いとはいえなかった作品ですが、英国映画協会が10年ごとに選出する「史上最高の映画(The Greatest Films of All Time)」の2022年度版ランキングにて、『めまい』『市民ケーン』『東京物語』など誰もが知る名作をおさえ見事1位に輝きました。

湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、洗濯をするといった“平凡な”暮らしを繰り返すジャンヌの3日間を、3時間以上にわたり淡々と追い続ける本作。『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督が「『ジャンヌ・ディエルマン』は常に心にある1本」と語り、ソフィア・コッポラ監督は「『SOMEWHERE』を撮るときに影響を受けた」と、そして『CLOSE/クロース』のルーカス・ドン監督は、18歳のときに本作を観て「それまで人生で見てきたものがすべて違って見えるようになった」と語るなど、現代映画に多大な影響を与える最重要作となりました。
今年5月に開催されるカンヌ国際映画祭の監督週間では、同部門での1975年の『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル 1080、コメルス河畔通り23番地』のプレミアから50周年を記念して、シャンタル・アケルマン財団と監督週間のコラボレーションが発表されるなど、世界中でこの歴史的傑作を祝すムードが高まるなか、日本でもゴールデンウィークに本作に触れる絶好の機会となります。
製作50周年記念限定上映『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル 1080、コメルス河畔通り 23 番地』
会期:5/2(金)〜5/8(木)
会場:Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下(〒150-0002 東京都渋谷区渋谷 1-24-12 渋谷東映プラザ 7F・9F)
公式サイト

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』
監督・脚本:シャンタル・アケルマン
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
配給:コピアポア・フィルム
1975年/ベルギー/カラー/200分
夫を亡くし、思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしているジャンヌ。湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、洗濯をするといった“平凡な”暮らしを繰り返すジャンヌだったが、永遠に続くと思われた日常の歯車は徐々に狂い始め、取り返しのつかない事態を自らの手で引き起こしてしまう。そんな主婦の3日間の一挙手一投足を心理描写を排し、ただただ丹念に、そして冷徹に描き出す。
© Chantal Akerman Foundation